だけど 日がくれるころ
とつぜんとてもとてもおなかがいたくなって
一歩もあるけなくなりました

しんじゃうのかな、わたし。

あかちゃんといっしょにしぬのなら、
それでもいいな………


ずうっとむかし、おかあさんにきいた
ゆりかごの歌をうたいながら
だんだん目の前がまっくらになっていきました
ぼそぼそときこえる話し声に、やがてわたしは
ベッドのうえできがつきました

……わたし、しななかったんだ。

おかあさんとともだちは
かわいそうにと泣きながらいいました

取ったのは片方の卵管だけだからね、
 
子供なんてまたすぐ出来る。
 早く忘れてしまいなさい」





ちかくの部屋で赤ちゃんがないていました。
だれかがいまさっきお母さんになったのでしょう。

…ねえ。またすぐできる、ってなに?
つめのさきほどもない ちいさなたねだけど
あのこはわたしのあかちゃんだったんだよ。
あのこは あのこしかいなかったのに
どうして忘れなくちゃいけないの?

ねえ。
どうして?
いなくなった佳子の報せを、オレは勤め先で聞いた。
彼女の実家に近い産婦人科に入院しているそうだ。

くそ…オレはなんて馬鹿だったんだ。
からだのことも、悩んでいたことも、
何も気付いてやれなかったなんて。

無理を言って休みをもらい、荷物をとりに
家へ戻ったオレを待っていたのは
普段からオレの生活になにかと
口出しする小煩い叔母だった。

正妻の妊娠が不可能な時期が長引く場合は
『控妻』を迎えることが望ましい–––––––

叔母がそう言うと、となりで
見覚えのある少女がオレに頭をさげた。



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